大判例

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札幌高等裁判所函館支部 昭和28年(う)114号 判決

所論は先ず、本件の訴因は差戻後の原審において検察官の請求により詐欺罪に変更されたところ、検察官はその後において右詐欺罪の訴因はこれを予備的に追加するものであると申立て、原審裁判所もこれを許したが、既に右のごとく訴因が変更された以上これによつて被告人に対する従来の訴因である横領罪は撤回されたものといわねばならない。しかるに原審裁判所が依然被告人に対する横領罪の訴因が存在するものとして判決をしたのは違法であるというのである(第四点)。よつて本件記録を調査するに、差戻後の原審第二回公判において検察官から被告人に対する訴因及び罰条か詐欺罪に変更するとの請求があり弁護人も異議なく、原審裁判所は右変更を許したことが明らかであるから被告人に対する従来の訴因即ち横領罪及び予備的訴因である背任罪はこれによつて撤回されたものといわねばならないことは、まさに所論のとおりである。しかし、その後第七回公判において検察官は被告人に対する右訴因及び罰条変更の申立はこれを予備的に追加したことに訂正すると申立てたことが認められ、右申立は名は訂正とはいえ、さきに撤回した横領の訴因及び罰条を再び追加してこれを本来的訴因となし、詐欺を予備的訴因となす趣旨の申立なることが明らかであり、しかして、これに対し弁護人から異議の申立があつたが、原審裁判所はこれを許しているから、被告人に対する横領の訴因が存在しないということはできない。次に所論は、仮りに検察官の前記訂正申立が前記のごとき趣旨であるとしても、変更によつて撤回された横領の訴因を再び追加するがごときは刑事訴訟法第三百十二条第一項の解釈上許されないというのであるが(第二点)、同条は公訴事実の同一性を害しない限度において起訴状記載の訴因又は罰条の追加、撤回又は変更はこれを許さなければならないというだけのことであつて、変更された訴因を再び追加することまで禁じているものではなく、原則的にこれを許しているものと解するのが至当であるから、原審裁判所の措置に対する右論難はあたらない。更に所論は、本件において差戻前の原審は、本来的訴因である横領罪につきなんらの判断をなさず、たゞちに予備的訴因である背任罪につき有罪の言渡をなし、控訴審も同様横領罪につき判断をなさず背任罪の成否につき判断したのみでこれを原審に差戻したのであるから、横領罪に対する審判の請求は窮極的に排斥されたものというべく、従つて差戻後の原審において横領罪の訴因を追加することは許されないというのであるが(第三点)、被告人からの控訴により原判決が破棄され、事件が原裁判所に差戻されたときは差戻を受けた裁判所は当初に戻つて検察官請求の起訴状記載の訴因につき審判をなすべきものであり、たゞこの間控訴審の裁判における判断に拘束されるに過ぎず、これを本件についていえば背任罪が成立しないとの判断に拘束されるのみである。従つて原審裁判所が前述のごとき審理の経過に従い横領罪につき判断したのは相当である。所論は要するに、独自の見解にたつて原審の措置を難ずるに過ぎない。

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